父の日おめでとう!  一年に一度お父さんにこう言うのをとっても楽しみにしていまし

た。  そのお父さんがいなくなってからもうすでに9年がたちましたね。  今でもさみし

いし、これからもずうっとさみしい思いがすることでしょう。  パパのことを好きだった

わ。  私たちが最後に一緒だった時、お父さんは私のことをずいぶんとからかったでしょ

うしょう?  あの時のことを今でも覚えている?  あれはちょうど最初の子供が生れる時

だったわ。  お父さんには二番目の孫の誕生だったわね。  初孫の時と同じ程にお父さん

は興奮していらっしたわね。  あの時のお父さんのことは忘れられないわ。

 

  あの時のお父さんの孫はすっかり成長して、今ここに私のそばにいるわよ。  お父さん

のたった一人の孫娘ですよ。  お父さんが天に召されて7週間後に入れ替わりにこの世に

生を受けてやってきたのよ。  今では私も二人の母親なのよ。  4年後には男の子も与え

られたのよ。  二人共とっても可愛い子供達なの。  お父さんもきっと可愛がって下さっ

ただろうと思うし、あの子達にとっても、おじいさんは必要だったんですよ。  おじいさ

んの体に触ったり、膝や背中に乗ってみたりすることも必要だったのですよ。  おじいさ

んのお話しを聞いたりしたっかただろうと思います。  時々あの子達からおじいさんのこ

とを聞かれるたびに、どんなに素敵なおじいさんだったかと言うことを話してやっている

のです。  そして、何よりも、あの子達のおじいさんはどんなにか立派なクリスチャンだ

ったのかを私は自信と誇りをもって話してやるのです。  本当にそうだったんですもの。

 

  お父さんは毎朝いつもほがらかで、陽気で、笑顔一杯でしたね。  私はどちらかと言う

と夜型人間だったから、早朝から御機嫌さまで、私達をからかったお父さんのことを、正

直な所、気が狂った人ではないかと、心の内で抵抗したり、軽蔑したりしたこともあった

わ。  私が年頃になるにるにつれ、午前9時以前には家の内でお父さんとは口をきたくな

いとすら思ったこともあったわ。  『むつかしい』年頃だった私はお父さんのことなど何

ひとつ解ってなどいなっかったのね。  本当に済まない事をしたわ。  ごめんなさいね。

 

  でもね、やっとこの頃になってお父さんの朝のユーモアの秘密の理由が解って来たの。

お父さんは一日の内の最初の半分を、聖書を読むこととお祈りに当てていらっしたんです

ね。  毎朝5時半に起きて、この二つのことを人生の大切なこととして実行する為の努力

をなっさっていたのでしたね。  道理でお父さんは毎朝とっても御機嫌だったのですね。

お父さんは毎朝ずっと神様とお話しをなっさってらっしたから、お父さんの生活は、毎日

その日その日が新鮮で、意味にあふれ、愛と喜びと平和に満ちていたのです。毎朝7時前

にはお父さんの心は神様との会話も終り、その日の準備がすべて出来ていたのでしたね。

ですから、私がお父さんの、その秘密を知った時から、どんなにかお父さんのことを心の

底から尊敬し、誇りに思い、素晴らしいと感じたことでしょう!  世界最高のお父さん!

 

  お父さんは神様のお言葉である聖書に精通なさってましたね。  よく覚えてますよ。

ずいぶんと沢山の聖句と聖書の個所を『心で』覚えてらしたわね。  それらは、頭で暗唱

するもののではなくて、心で、心の内に入れるものだし、そのほうが自分の性にあってい

る…と、私におっしゃったことを今でも覚えていますよ。  聖書のみ言葉が心の内にあれ

ば、それは自分の生活と命の一部分だよ…ともおっしゃったでしょう。  悪魔ですら聖書

や聖句は暗記して覚えているもんだからなア …とその時に私に話して下さったわね。

悪魔ですら聖書をよく暗記していて、たとえばマタイ伝4章に記録されているように、暗

唱した聖書を上手に引用して荒野でイエス様を誘惑しようとしたものだ…ともおっしゃっ

たのを今でもよく覚えていますよ。  そして、イエス様は聖書を『心で』知っていらっし

ゃったから悪魔なんかには負けないのさ…!  とも笑いながら教えてくださったわね。

それから、詩編119:11の  『わたしは  あなたにむっかって  罪を犯すことのない

ように、  心の内にみ言葉をたくわえました。』  の聖句の意味を私にその時しっかりと

教えて下さいましたね。  あの時の教訓を今でも忘れてはいませんよ。

お父さんは本当に世界最高の素敵な人、今でも大好きよ!!

 

  もうひとつ忘れてないのは、お父さんにとって教会生活がどんなにか大切なものであっ

たかと言うことだったわね。  毎日曜日の朝の教会学校、バイブル・クラス、礼拝はもと

より、あらゆる種類の教会活動に家族中で参加したわね。  いつも全家族で出かけたわ。

お父さんは私達家族のひとりでも家に残るのを許さなかったわね。  なかば強制的に教会

に連れて行かされたのよ。  そのことをお父さん、覚えてる?

 

  本当のところ、あの頃の私には、一方的にお父さんが私達を教会に強制連行しているみ

たいな気がして、とっても嫌だったのよ。  ずいぶんと心の内で反抗していたのよ。

でもね、今になって考えてみると、あの時の反抗心は結局のところ、教会以外の所ならど

こでもよかったんだし、そこで何か別のことをしていたいと言う未熟な私の我侭から出て

いただけだったんだわ。  家に残ってテレビ番組を見たいとか、本を読みたいとか、友人

と何処かに行きたいとか、そんなことばかりだったわ。  でもお父さんはいつもそんなと

き必ず忍耐強く、しかも頑固に繰返して私におっしゃった口癖があったのよ。

          『そんなことは帰ってから出来ることだ!  後でやんなさい!』

 

  あれからもう何年もたってしまって、今から想いだすと、あんなに反抗してまで見たか

ったテレビ番組も、読みたっかった本も、会いたっかったのに会わせてもらえなっかった

友人のことも、正直いって何ひとつ覚えてなんかいないのよ。  それにくらべると、ちい

さい時にお父さんやお母さんと一緒に皆で教会に行った頃の想い出は、今ではとっても大

切なものとして私の心に残っているんだから不思議だわ。  教会で多くの人々から、いろ

いろと大切なことを教わったのも、今になって考えてみると、お父さんが私達を教会に連

れて行って下さったからですよ。  私の人生の先々のこと迄も深く考えて、いろいろと配

慮して下さったお父さん、私もやっとこの頃、親になってみて初めてお父さんのことが解

って来たのよ。  パパ、有難とう!  素敵なお父さんだったのね。

 

  また、お父さんは神様の立派な証人だったわね。  お父さんが行くところ、何処でも誰

でも、皆がお父さんがクリスチャンだと知ってましたね。  お父さんはどんな人にも笑顔

で挨拶してたわ。  貧乏な人にも、お金持にも、人種や皮膚の色や国籍が違う人にも、そ

して何よりも宗派や信仰がどんなに違う人々に対しても、いつもお父さんの方から握手の

手を差し出して、優しく誠実に挨拶していらしたわね。  それでいて、お父さんの神様に

対する信仰は頑固なまでに堅く、まるで河の側に立つ大木みたいだったわ。

とかく『信仰』に凝り固っている人の中には往々にして自分以外の信仰や宗旨を認めない

人が多いみたいだし、ちょっと意見が違っても相手を人間扱すら出来ない人もいるみたい

だから、その点でお父さんは素敵だったわ。  本当に大木って感じだったわよ。

 

  あれはお父さんのお葬式の日だったかしらね、クリスチャンのひとりが『あなたのパパ

がいないと、教会もまるで大きな空家みたいにかっらぽで寂しいわ…』と、目に涙を一杯

ためて私にささやいたのよ。  クリスチャンでない御近所のひとりがママに『御主人は実

に誠実な、素晴らしいお方でしたね。  本当にあのような人のことを神の人と言うんでし

ょうな…。  御主人さんとお近ずきになれて幸せでしたよ。  私は教会に行くような人間

ではありませんが、あのような方に親しくして頂いたんだから神様に感謝しなければ…』

と話していらしたわ。お父さん、  あれから何年かたった今でも、私達はお父さんのこと

で神様に感謝していますよ。    むしろ時間がたったこの頃のほうが、感謝の気持が強い

ように皆さん感じていらっしゃるみたいよ。  私も勿論そうだけど…。

 

  お父さんが私に教え込んで下さったことを思いだすと時間がいくらあっても足りるもの

ではないわ。  だから、お父さんが私に教え込んで下さったように、私も子供達に、人と

しても、神様を信じる者としても、同じように教え込みたいと願ってます。  子供達にも

孫達にも、お父さんのような人間になってほしいの。普通の人で、神様を畏れ、神様と人

間を愛して仕える人、しかも自分の子供達に神様のことをよく教え込める人間になって欲

しの。  普通の人だけど天の神様の影がなんとなく感じられるような人にね…。

 

  お父さん、お父さんは普通の人だけれども、父親とはこう言うようになってほしい、こ

う言うようにあってほしいと願っていらっしゃる神様のお考え、神様の理想像にピッタリ

の人だと思うのよ。  お父さんが特別な人だと言うのでなく、神様の愛がお父さんの人生

を創り変えたからなんだわ。  神様の力がお父さんを創り変えたのよ。  お父さんの人生

の中心は神様だったし、お父さんを知ってた人々は皆んなお父さんが神様の子供だったこ

とをよく知ってたのよ。

 

  素敵な遺産を下さって有難とう、  おとうさん!  この地球の上で、お父さんのような

方を、血のつながった私のお父さんとし、霊的にも、神様を畏れる秀れた父として同時に

持てたことを私は心から誇りに思ってます。  好きよ、パパ!  父の日おめでとう!!

 

                        お父さんの大好きなヴェルナより