Phoebe, a deaconess of the ekklesia at Cenchreae

            《ケンクレヤ集会の女性執事フィベ:  ロマ書16章1節》

 

    音を文字で書き表すことは至難の業の一つです。  外国の名前は特にです…

この主人公の名前は、日本語ではすべて「フィベ」となっていますが、強いて書けば

「フェ」と「フォ」中間に位置する二重母音で、Phoebe  だろうかと思います。

 

  使徒パウロが三回目の伝道旅行を終えた頃の出来事でしたが、地中海沿岸、現在の

ギリシャ半島とトルコ半島西部との間のエーゲー海沿岸各地には使徒パウロに激しい

敵愾心を抱いていたユダヤ教徒たちがパウロを捜して虎視眈々で、パウロにとっては

実に危険な状態でした。  使徒行伝20章の冒頭にそのことが記載されています。

 

  そういう切迫した緊張状態の中で、ケンクレヤのエクレシア(教会または集会)で

執事として仕えていたフィベ(またはフェベかフォェベ)が選ばれ、対岸エペソ集会

宛の紹介状を携えてエペソに無事渡ったのです。

 

  恐らく長い羊皮紙にぎっしりと手書きしてあった、今わたしたちがロマ書と呼ぶ書

を、彼女は巧みに隠して、パウロを捜し出そうと、船が到着するたびに躍起になって

いたユダヤ教徒たちの目を潜り抜けて届けたのです。

 

  憶測ですが、少なくとも幅50cm前後で何メートルかのゴワゴワとした羊皮紙の巻物

数点が、ちょうど巻かれた反物のような格好で、まとめられていたものと思います。

  相当にかさばる荷物であったのでしょうが、彼女の祈りと智恵によって厳しい監視

の目を潜ってパウロの手からローマに居たキリスト者たちに無事に極めて大切な書簡

が届けられたものと思います。

 

  フィベが自分自身の生命の危険を顧みない強い信仰の行為によって、私たちは現在

でもキリスト教福音信仰の大黒柱であるロマ書を持つているのです。

  白須和子さんが富士吉田にある母教会のためにフィベ役を充分に果たされるように

心から祈るものです。

                                                  2005年3月20    野村基之